齊藤啓介提供

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金車噶瑪蘭威士忌酒廠

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金車カバランウイスキー蒸溜所

フルーティーな味わいで国際的に評価された台湾ウイスキー

もともとは衛生用品や清涼飲料水、缶コーヒーなどの飲料、カフェなどを手がけていた金車グループが2005年に設立した比較的新しいウイスキー蒸溜所です。東部の宜蘭県郊外の田園地帯にあり、西洋のお城を思わせる外観が目を引きます。ウイスキーの本場スコットランドから蒸溜器(ポットスチル)を輸入したほか、社員を派遣してウイスキー作りのノウハウを吸収。初めて作られたカバランクラシックシングルモルトウイスキーはハチミツ、マンゴー、洋ナシ、バニラ、ココナツの香りがするとして世界中で驚きを持って迎えられ、高い評価を得ました。現在では国際的な品評会で入賞することも珍しくなくなり、国外では思わぬ高値が付けられていることもあり、入手が困難な状況もあるようです。

学びのポイント

なぜウイスキーが作られるようになったの?

台湾ではもともとお酒は専売制でしたが、WTO(世界貿易機関)に加盟した2002年に自由化されます。かねてお酒の市場への参入を検討していた金車グループの経営陣は、台湾だけでなく、世界的に贈答用としての需要が高かったウイスキー作りに目をつけました。一般的に温暖な地域ではウイスキーの醸造は適さないと言われますが、宜蘭では冬に気温が10度前後になる時期があり、夏と冬の気温差を上手に利用することで多くの人に受け入れられる味を生み出しました。そればかりか、熟成にかかる時間をイギリス、日本の最低3年、アメリカの4年に対して2年に短縮し、効率の良い生産を実現しました。現在では年間900万リットル以上のウイスキーが作られています。

おいしさの秘密はなに?

蒸溜所のある宜蘭県は秋から春にかけて、北東の東シナ海から湿った季節風が吹き付けるため、降水量が多い地域です。また、台湾の東側には五大山脈のひとつで、標高3000メートル級の山々が連なる雪山山脈が連なっており、深い森と山々に濾過された良質な軟水が豊富です。この水を使うことでウイスキーの口当たりが柔らかくなり、ほのかな甘みが感じられるのです。さらに、熟成用の樽はワインやブランデーなどで使われたものを世界各地から調達したり、一度ウイスキーを作った樽を再利用し、研磨や加熱を施すチャーリングという工程を経て雑味を取り除いたりして、芳醇な香りと深みのある味わいに仕上げています。

齊藤啓介提供

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】かつて台湾にあった酒類専売制度について調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】台湾ではカバランウイスキーのほかに、どんなお酒が作られているのか調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】カバランウイスキー蒸留所の年間生産量やどんなところに出荷されているのかを調べてみましょう。
参考資料
2002年、WTO加盟後の台湾における酒類制度については、倉光潤一「台湾における酒類制度と市場について」(『日本醸造協会誌』2008年103巻第5号)に詳説されています。専売制度の廃止と台湾の酒造りと地方再生については、岸保行・曾國哲・浜松翔平「台湾における酒蔵設立と地域再生への取り組み ―台中市霧峰農協酒蔵が受け継いだ日本の酒造りの心得と新たなる挑戦―」(『交流』No.949、2020年4月)が参考になるでしょう。台湾の飲食文化の概説は、赤松美和子、若松大祐編著『台湾を知るための60章』(明石書店、2016年)第44章「飲食文化」で知ることができます。カバランの語源であるカバラン族については、清水純「漢化のメカニズム ―クヴァラン族の事例から―」(『国立民族学博物館研究報告別冊』、1991年)を読んでみましょう。

(齊藤啓介)

 

ウェブサイト
公式https://www.kavalanwhisky.com/jp
所在地
宜蘭県員山郷員山路二段326号

特記事項
未成年だけの見学はお控えください。未成年の試飲はできません。
2021年9月30日現在、見学は完全予約制になっています。電話:(03)9229−000、またはこちらから予約ができます。20人以上のグループでガイド付き蒸溜所ツアーを利用希望の場合は3日前までに要予約。日本語、英語でのガイドあり。