重金優子撮影

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北投溫泉博物館

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北投温泉博物館

日本統治時代、台湾最大の公共浴場

台北駅からMRT(地下鉄)で30分ほどのところに位置する北投は、その昔、台湾の先住民族ケタガラン族の言葉で「巫女の住む地」を意味する「パッタウ」と呼ばれ、「草木は生えず、地は焼けるように熱い」ところとされていました。たえず温泉の湯けむりに包まれていたため、巫女が住む地と呼ばれていたようです。
北投の地には、日本の統治が始まって2年目の1896年、早くも日本人による温泉旅館が2軒開業しました。その後、1913年、北投温泉郷構想の一環として、台湾最大の公共浴場が建設されました。これが今の北投温泉博物館の前身です。
1945年、日本の敗戦により台湾から日本人が去った後もしばらく栄えていた北投温泉ですが、80年代以降は次第に廃れてゆき、公共浴場も長年放置され廃墟寸前になっていました。ところが、90年代になって、地元の小学生たちが郷土学習の授業で公共浴場跡を偶然発見し、その後の保存運動へと続きました。その結果、1997年には台北市の文化財に指定され、翌1998年に「北投温泉博物館」として生まれ変わりました。

学びのポイント

北投はどんなところ?

7世紀頃の北投は、先住民族とスペイン、オランダとの間で硫黄を中心とする交易が盛んに行われていました。陶磁器の原料となる白瓷土、畳表の材料となるイ草、城壁にも用いられた岩石などが採れ、北投石の産地としても有名な北投で、温泉の開発が始まったのは19世紀末の日本統治時代に入ってからです。特に、1913年に公共浴場が完成すると、入浴施設や旅館が立ち並ぶようになり、鉄道の支線が建設されて新北投駅ができると、より多くの人が訪れるようになりました。夏には納涼祭が行われ、北台湾有数の歓楽街にまで発展したのです。戦後、しばらくして廃れてしまった温泉街ですが、21世紀に入り地域再生プロジェクトが始まり、今では多くの入浴施設や旅館、ホテルが立ち並んでいます。日本でもよく知られた温泉旅館も進出しており、ミシュランガイドの三ツ星観光地に選ばれています。

重金優子撮影

北投温泉博物館の建物の特徴は?

台湾総督府などの設計を手掛けた建築家森山松之助によるもので、レンガと木材が使われ、屋根は黒瓦で葺かれた和洋折衷の美しい建物です。1階には大浴場と個室の浴場、2階には風呂上がりの人々がくつろげる畳敷きの大広間があります。1階の古代ローマ風の大浴場は、両側にステンドグラスがはめ込まれた窓があり、アーチ型の回廊に囲まれています。湯面にステンドグラスを通過した陽の光がキラキラと反射する小さなプールほどの大浴場は、深さが40cmからだんだん深くなり、最も深いところでは130cmほどになるため、深いところでは「立ち湯」だったとのこと。50~60人程度が一度に入浴できたようです。

重金優子撮影

日本統治時代、北投温泉はどのように楽しまれていた?

開発当初は、湯治客や日露戦争当時、傷病兵が傷の手当のために逗留する場(陸軍療養院)が作られたほか、軍や政府高官、豪商たちの保養施設としても利用されていました。その後、じょじょに日本文化が持ち込まれ、軒を連ねる日本人相手の温泉旅館には芸妓や流しの歌手が現れ、日本の温泉街のようなにぎやかな夜の街になりました。1913年に北投公共浴場が建設されてからは、夏に大規模な納涼祭が催されるようになりました。この納涼祭は、2019年から「北投納涼祭」として復活しています。

重金優子撮影

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【現地体験学習】【事後学習】みなさんの身近にも昔の建物が保存され、再利用されている建物があると思います。保存の経緯、再利用の仕方など、北投温泉博物館との共通点や相違点を調べてみましょう。また、それぞれどのような苦労があり、再利用にあたってどんな工夫がされているかも調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】北投温泉博物館は、台湾総督府を設計した建築家森山松之助が手がけたものです。台湾だけではなく日本にも森山が設計した建物がいくつもあります。探してみてください。また、北投温泉博物館は東京駅にもちょっと雰囲気が似ていると思いませんか。どんな関係があるのか、調べてみましょう。
  • 【事前学習】【現地体験学習】北投温泉博物館には、どんなものが、どのように展示されているでしょう。事前にネットで情報を集め、実際に博物館で展示物や展示のし方を見てみましょう。例えば、バイク便が紹介されていますが、なぜ温泉博物館で紹介されているのでしょうか。
参考資料
北投温泉博物館については、Facebookを見てみましょう。Facebook左欄「北投溫泉博物館をもっと知りたい!」に、日本語での情報および館内の写真があります。
北投全般については、 「UNDISCOVERED TAIPEI 北投」(台北市観光局作成)の添付ファイルダウンロードの下にある 「UNDISCOVERED TAIPEI—北投PDF」をクリックしてパンフレットをダウンロードしてみてください。台北市内の各MRT駅、観光施設などでも無料配布(新北投駅にも配布コーナーあり)しています。
過去から現在の北投の様子(温泉博物館を含む)は、 YouTube 「心聲‧新生-北投温泉博物館再発見 (日本語)」 を見てみましょう。2019北投納涼祭についても、 日本語サイトがあるので参考にしてください。
さらに専門的知識を深めたい方は、特に戦後の北投温泉地の浮き沈みに関しては、東美晴「東アジアにおける観光とグローバリゼーション--台湾の日式温泉の事例から」(『流通経済大学社会学部論叢14巻』、2003年10月)で詳しく知ることができます。

(阿部由理香)

ウェブサイト
公式 https://hotspringmuseum.taipei/

(日本語・中国語・英語)

交通部観光局 https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003090&id=3607 台北旅遊網(台北市政府観光伝播局) https://www.travel.taipei/ja/attraction/details/750
所在地
台北市北投区中山路2号

特記事項
入館料:無料
予約:不要
館内人数上限:200名
写真撮影:商業用や写真集の撮影、三脚の使用は禁止
注意事項:
・文化財ですので、車いすやベビーカーの使用はお控えください
・館内土足厳禁。必ずスリッパに履き替えてください
・日本語の説明パネルあり
・日本語ガイドあり(公式ウェブサイトにて予約)
・バーチャルツアー、案内ビデオあり(ともに公式ウェブサイトに日本語版あり)