八二三戦史館 八二三戦史館

中台「熱戦」の記憶を鮮明に伝える

山﨑直也撮影

1958年8月23日、中国の人民解放軍は、福建省の主要都市・厦門から海を隔てて数キロの距離にある金門島に対し、突如猛烈な砲撃を開始しました。わずか一日で5万7千発を超える砲弾が撃ち込まれたこの島は、中華民国政府が1949年12月に中国大陸から台湾に撤退した後も、中華人民共和国による「解放」を免れ、台湾島、澎湖島、馬祖島とともに、中華民国政府の実効支配下に留まりました。砲撃が始まった日から八二三砲戦とも、あるいは第二次台湾海峡危機とも呼ばれる戦闘は、金門島に甚大な被害をもたらしました。この戦いを記念して1988年に建てられた八二三戦史館では、東西冷戦下の中台間の「熱戦」について、体系的な理解が得られます。

学びのポイント

金門島と台湾の関係は?

今日、「台湾」という言葉は、二つの意味を持っています。狭義の台湾は、台湾島(77の付属島嶼を含む)を意味し、広義の台湾は、中華民国政府が実効支配する台湾島、澎湖島、金門島、馬祖島の総称で、現在では、国際的にも中華民国よりこの呼称が一般的です。しかし、約50年間日本の植民地統治下にあった台湾島、澎湖島と、1912年の中華民国成立以来、ほぼ終始その一部を成し(金門島は戦時中、日本の軍事占領を受けた)、日本の植民地統治を経験していない金門島、馬祖島は、歩んできた歴史に大きなちがいがあります。台湾とは何かを考える上で重要な金門は、台北から飛行機で約1時間。中国福建省の大都市・厦門から海をはさんで数キロに位置し、天気が良い日は互いに眺めることができます。

八二三砲戦とは?

日本との戦争(1937~45年)に勝利してからあまり長い時間を経ずに、中国大陸では中国国民党と中国共産党の対立が内戦に発展しました。その結果、共産党は1949年10月に北京で中華人民共和国の成立を宣言し、国民党は同年12月に中華民国政府を台湾に移したわけですが、前者には社会主義陣営(東側)の盟主であるソ連、後者には資本主義陣営(西側)の盟主である米国がそれぞれ後ろ盾となりました。東西の対立は、直接的に戦火を交えることがない「冷たい戦争(冷戦)」と呼ばれましたが、数少ない「熱戦」の舞台となったのがこの金門島で、1958年8月から10月の間に、実に47万4,910発もの砲弾が中国側から金門島に撃ち込まれました。

八二三戦史館の展示品

八二三戦史館では、砲撃戦の詳細なデータ(1958年8月23日から同年10月までの毎日の着弾数のグラフなど)、砲弾で破壊された集落の精巧なジオラマ、当時使用された兵器など、数々の展示でこの戦闘を多角的に理解することができます。また、中華人民共和国と向き合う中華民国の最前線として軍政が敷かれた金門に、かつて人口よりも多く駐留した兵隊さん(阿兵哥)に支給された紙幣(逃走防止のため金門でのみ流通するようになっている)、金門島海岸に流れ着いた中国側の宣伝物資と中華民国側が中国に流した宣伝物資など、この島ならではの興味深いモノから中台の軍事的緊張の記憶をたどることができます。

軍政下で発行された金門島でしか使えない紙幣(山﨑直也撮影)

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】第二次台湾海峡危機(八二三砲戦)の背景と1954-55年の第一次台湾海峡危機、1995-96年の第三次台湾海峡危機について調べてみましょう。
  2. 【事前学習】【事後学習】2016年就任の蔡英文総統は、2018年の八二三砲戦60周年記念式典には出席しなかったものの(Facebookでメッセージを発表)、翌年の61周年記念式典で初めて式典に参加しました。関連する報道等を調べ、この戦闘の今日的意義について考えてみましょう。
  3. 【現地体験学習】金門島では八二三砲戦で中国から撃ち込まれた大量の砲弾を利用して商品化し、それが島の代表的なお土産品となっています。それが何かを現地で確かめてみましょう。

参考資料

金門島という場所のおもしろさと特殊性を知るきっかけとして、川島真『中国のフロンティア』(岩波新書、2017年)の第9章および第10章、京都大学地域研究統合情報センターの学術雑誌『地域研究』のVol.11 No.1(2011年3月31日)の特集「金門島研究―その動向と可能性」が参考になります。第二次台湾海峡危機(八二三砲戦)について理解するためには、当時の台湾をめぐる国際環境を知る必要がありますが、そこに至る流れを比較的簡潔に整理したものとして、若林正丈『台湾』(ちくま新書、2001年)の第4章が参考になります。また、より専門的なものとして、福田円『中国外交と台湾―「一つの中国」原則の起源』(慶應義塾大学出版会、2013年)があります。Rti台湾国際放送の「823砲戦から60年、総統:当時の将兵に感謝」という動画は、2018年の60周年の時に蔡英文総統がFacebookでメッセージを発したことを報じたものですが、当時の激戦の様子が映し出されていて興味深いです。

(山﨑直也)

ウェブサイト
交通部観光局https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003126&id=6249 金門観光旅遊(金門県政府観光処)https://kinmen.travel/ja/travel/attraction/135
所在地
金門県金湖鎮安民村1之11号