鶴園裕基撮影

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芹壁聚落

芹壁集落

かつての馬祖漁民の生活に思いを馳せる

北竿島は馬祖列島第二の島です。島の中央には壁山と芹山がそびえ、地形は起伏に富んでいます。海沿いの道を歩けば、至る所で山の麓と海が接する様子を見ることができるでしょう。北竿島の北側の海岸線に位置するのが芹壁集落です。ここは伝統的な閩東式建築が完全な形で残された馬祖で唯一の村で、台湾島や金門で見られる閩南式建築とは異なる伝統建築を観察することができます。村の建物には様々な反共標語が掲示されており、中国共産党と対峙していた冷戦時代の軍事管制の名残がうかがえます。かつては廃村同然の状態でしたが、修築・保全された現在では民宿もあり、カフェを楽しむことができるエリアとなっています。

学びのポイント

芹壁集落の成り立ち

馬祖には入り江の周辺に建物が集中して形成された集落が多くあります。これらは「澳口集村」と呼ばれ、芹壁集落もその一つです。この集落は、200年以上前の清朝時代に、福建省長楽県の鶴上から陳氏一族が移住したことに始まると言われています。およそ100棟ある芹壁集落のなかでも、特に目を引くのが芹壁村14号の「海盗屋」(海賊屋敷)と呼ばれる建物です。この建物は1940年代に北竿を拠点に活動した海賊・陳忠平の邸宅として建てられました。かつてはエビ漁で賑わった芹壁集落ですが、1970年代に水産資源が枯渇すると、ほとんどの村民は台湾島に移住し、廃村同然になっていました。しかし後に芹壁集落の文化的な価値が評価され、2000年代以降に連江県政府の補助によって復興が進み、現在に至っています。

鶴園裕基撮影

閩東式建築の特徴

芹壁集落の建物は、外壁は石造り、内部は木造になっています。北竿島内から切り出された花崗岩や木材が主な材料として使われていますが、富裕層が建てた建物には対岸の福建省から運んだ上質な石材や木材が用いられています。屋根はほとんど壁面から張り出さず、屋根の角度も緩やかなのが特徴です。また、瓦が飛ばされるのを防ぐための石が置かれているのも観察できるでしょう。窓は建物に比べて小さく、また各棟は壁を接するように密集して建てられています。建物によっては入り口の左右上方に鯉の装飾が施されており、その口は雨樋の排水口の役目を果たしています。村の中を歩くだけでも閩東式建築の特徴がうかがえますが、芹壁聚落の民宿に泊まれば、さらに内部の構造も観察できます。

鶴園裕基撮影

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】馬祖列島を地図で調べ、中国、台湾との位置関係を確認してみましょう。
  • 【事前学習】福建省は地域によって文化が多様ですが、「閩南」と「閩東」は文化的にどのように違うのか、調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】閩東式建築と閩南式建築ではどこが違うのか、比較してみましょう。
参考資料
馬祖全体の歴史と文化を紹介したエッセイとして、栖来ひかり「たいわんほそ道~馬祖──島と島をつなぐ海の道をゆく」(前編 : 後編)が挙げられます。また馬祖の各スポットの概要は、交通部観光局の日本語ウェブサイトが比較的充実しています。 現地では、南竿ビジターセンターで配布されているパンフレット「バックパッカーとして馬祖を楽しもう!バックパッカー向け馬祖完全攻略」が入手できます。

(鶴園裕基)

ウェブサイト
交通部観光局馬祖国家風景区管理処 https://www.matsu-nsa.gov.tw/Attraction-Content.aspx?a=2711&l=3
所在地
連江県北竿郷芹壁集落