赤松美和子撮影

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國立台灣史前文化博物館

国立台湾史前文化博物館

台湾の過去と現在をむすび、国際的視野で台湾文化を考える博物館

国立台湾史前文化博物館は、先住民族人口の割合が高い台湾東部の都市、台東に2001年に開館した国立博物館で、台湾の先史文化と台湾の先住民族(中国語では原住民族)の文化の展示をしています。博物館(康楽本館)は2階建てで、出入り口は2階にあります。2階には常設展示の「台湾自然史」と「台湾南島民族」、それに特別展示場が、1階には「台湾史前史」の常設展示があります。北東に5kmほど離れた場所には、博物館設立のきっかけとなった卑南遺跡があり、現在はその発掘現場が見学できる卑南遺址公園となっています。博物館では、まず2階で台湾の自然史を概観してから1階に移動し、台湾の先史時代を理解した後、ふたたび2階の展示場にもどり、台湾の先住民文化に関する展示を観覧することで、総合的な理解を深めることをねらいとしています。

学びのポイント

古くから知られていた卑南遺跡

博物館が建てられている地域は、以前から考古遺物や人工物と考えられる巨石などが発見されており、日本統治時代からすでに考古学的な調査が進められてきました。1980年に新たな鉄道幹線の造営のために行われた工事の最中に、多くの石板と副葬品、土器片や磨製石器が発見され、遺跡の規模、遺物の豊富さから工事の中止が決定され、一帯の緊急発掘調査が行われました。台湾の先史時代を研究するうえで重要な資料が数多く発見され、遺跡の重要性が再認識された結果、同遺跡を野外博物館として保存し、遺跡から出土した遺物を研究してその成果を公表するための博物館の設置が提案されました。

多様な先住民族の集まる地

一方で、台東はアミ族、ブヌン族、プユマ族、パイワン族、ルカイ族に加え、タオ族が住む蘭嶼島への窓口となる地であり、多様な先住民族の人々が日常を送っています。地域の人々にとって先住民族文化は、台湾の先住民族文化だけではなく、自分たち自身の文化でもあります。史前館には地域の発展をうながし、台湾東部の観光事業を促進することも期待されています。

赤松美和子撮影

   

過去と現在をつなぎあわせる

台湾の先史時代文化をつくってきたのは、現在の台湾先住民族の祖先の人たちであると考えられてきました。そして、台湾の先住民族の言語の多様性に関する研究から、台湾は、東南アジア島嶼部から太平洋の各地にひろがったオーストロネシア語族に属する言語の祖語が生まれた地であるという仮説が立てられました。台湾の先史時代文化と先住民族文化との関係は、台湾にとどまらない国際的な視野で考えるべき研究テーマです。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】台湾の先史時代は、日本の歴史でいうと何時代に相当するでしょうか。同時代の台湾と日本とを比較してみましょう。
  • 【現地体験学習】博物館に展示されている考古学資料の種類、材質、特徴を調べてみましょう。また、「人獸形玉玦」を探して、その特徴をスケッチしてみましょう。
  • 【事後学習】台湾の先住民族の文化と太平洋各地の民族文化を比較してみましょう。
参考資料
国立民族学博物館編『オセアニア 海の人類大移動』(昭和堂、2007年)からは、太平洋の民族文化と台湾の先住民族の文化との関係を学べるでしょう 。YouTube番組「おうちで楽しもう台湾の博物館」第5回「国立台湾史前文化博物館」では、なぜこの地に博物館ができたのか、また国立台湾史前文化博物館のデータベースでは、収蔵品の3D画像を見ることができます。国立民族学博物館のフォーラム型情報ミュージアムデータベースは先住民族も含めた台湾の物質文化を調べる手がかりになります。

(野林厚志)

ウェブサイト
公式https://www.nmp.gov.tw/(中国語) 台東観光旅遊網(台東県政府)https://tour.taitung.gov.tw/ja/attraction/details/843
所在地
台東県台東市豊田里博物館1号