日本統治時代の1937年に台湾総督府によって大屯(現・陽明山)、次高(現・雪覇)タロコ、新高(現・玉山)阿里山の3か所の国立公園が指定されました。次高タロコ国立公園は現在のタロコ(太魯閣)国立公園、雪覇国立公園、それに大甲渓流域一帯を含む広大な地域でした。1941年には次高タロコ国立公園の切手が発売されましたが、国立公園計画は太平洋戦争によって完成せずに終戦となりました。戦後は、1984年に最初の国立公園として墾丁国立公園が指定されて以来、現在まで9か所が指定されました。
見どころは、大きく2つあります。
・地形と地質:雄大な峡谷景観の中でも錐麓断崖は幅1200m、高さ1100mの大理石の絶壁で、対岸の福磯断崖とはわずか20m強しか離れていません。その上部には、現在の道ができる以前の錐麓古道があります。断崖や標高3000mを超す山岳連峰には立ち上がる褶曲が観察できる場所もあります。暑いイメージの台湾ですが標高3417mの合歓山にはスキー場があります。
・生態系:国家公園内では多数の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫(なかでもチョウ)植物(なかでも維管束植物)等豊かな動植物が棲息しています。どんな生物がいるか、台湾固有種を中心に調べてみましょう。
原英子提供
タロコ族は狩猟や漁撈、採集を営んできましたが、国家公園の設立はそうした伝統的生活に制限を加えることとなり不満の声もきかれます。タロコ族の人口は3万人以上です。もともと中央山脈の西側の濁水渓上流に居住していましたが、一部が奇萊山北峰をとおって立霧渓に移住しました。狩猟や漁撈に長け、女性は機織りで着物やマント等の日用品を織っていました。現在では伝統的模様などを活かし現代的にアレンジした品物をつくり空港や観光地で売っています。以前は顔に入れ墨をしてその模様で自分の出自の系統がわかるように表現する風習がありました。
世界遺産に登録されるにはユネスコの世界遺産リストに載る必要があります。リストに載るためには世界遺産として推薦をする必要がありますが、この推薦は世界遺産条約の締結国しかできず、台湾は締結国ではないからです。