陳麒文撮影
台東縣大坡國民小學
大坡小学校
すべり台が記録したプレート活動
台湾東部にある池上断層の地表トレースは、大坡小学校のグラウンド東側の山麓に沿って分布しています。校内のすべり台の上部が傾いていることや擁壁のひび割れなど、断層による変化の様子が見られます。大坡小学校がある斜面上の体育遊具の真下の岩層は泥岩のメランジュであるため、斜面は非常に滑りやすくなっています。この斜面で小規模な地すべりが持続的に発生し、そこにある溝が押されて下へ滑り、擁壁に裂け目ができました。地すべりと断層の二つのメカニズムの組み合わせにより、地表の破壊がより複雑となり、分析が困難です。台湾の地質学者は、大坡小学校でさまざまな測定を行い、池上断層の活動をモニタリングし、断層の活動パターンを解明しようとしています。
学びのポイント
池上断層の特徴
池上断層は台東県池上郷の東側に位置する縦谷断層の一部で、富里北から瑞源まで約35kmにわたって続いています。フィリピン海プレートとユーラシアプレートの間の境界上にあり、世界で最も活発に動く活断層の一つです。一般に、横ずれ断層にのみ断層クリープ運動が見られると思われていますが、池上断層は毎年約2~3cmの速度でクリーピングしています。フランスの有名な地質学者であるアンジェリエ教授(Jacques Angelier)が、池上断層の研究に多大な貢献をしたことも知られています。
地震とクリーピング
プレート運動で圧縮する力が、池上断層の活動を引き起こし、主に地震とクリーピングの二つによって、蓄積したエネルギーを放出します。地震は非常に短い時間で発生し、大量のエネルギーが放出されます。一方のクリーピングは、長時間ゆっくりとエネルギーを放出し続ける小規模な断層の活動です。池上断層では、1951年と2003年の2回、マグニチュード6の地震が起こり、同時に地表断層の破壊も発生しました。二つの大地震の間(地震間期とも呼ぶ)の約50年間は、クリーピングが起こっています。断層クリープ運動は、擁壁や溝などの破壊につながるため、無視できない現象です。
プレート境界
池上郷は台湾の主要な地質境界である花東縦谷に位置しており、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートが接する場所にあります。プレート移動速度の測定によると、フィリピン海プレートは毎年約8cmの速度でユーラシアプレートに向かっています。台湾の中央山脈は、過去数百万年に渡るプレートの衝突で押し上げられてできたもので、頻繁に起こる地震はプレートの衝突が今でも活発に続いていることを示しています。花東縦谷の東側にある海岸山脈は、フィリピン海プレートの一部で、その西側にある中央山脈は、ユーラシアプレートに属します。大坡小学校から車で30分ほどの自動車道の橋にその境界が表示されています(板塊交界記念碑)。
陳麒文撮影
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】アンジェリエ教授がどのように池上断層を調べたか、交通部観光局「地質の旅―池上断層エデュケーショナルパーク」という動画を観てみましょう。
- 【現地学習】大坡小学校で池上断層の活動を測量する機器について調べてみましょう。
- 【事前学習】【事後学習】大陸プレートと海洋プレートの違いについて調べてみましょう。
参考資料
池上断層を含めて、「地質学の宝石」と言われる台湾の「悪地」の概略については、『Taiwan Panorama』の「悪地」の実り利吉泥岩悪地の物語」という記事を読んでみてください。
交通部観光局のYouTubeチャンネルでは、台湾の特徴的な地層を「地質の旅」と題して紹介しています。「さらに学びを深めよう」でも紹介した「地質の旅―池上断層エデュケーショナルパーク」は、その中の1本です。他の動画も見てみましょう。
さらに知識を深めたい人には、川端訓代等「台湾縦谷の玉里断層クリープ運動—玉里大橋の変形」(『地質学雑誌』、117 巻 1 号、2011年)、「台湾における活断層研究の現状と問題点」(『地質ニュース』第564号、2001年)が、台湾の活断層の全体の理解に役立ちます。
交通部観光局のYouTubeチャンネルでは、台湾の特徴的な地層を「地質の旅」と題して紹介しています。「さらに学びを深めよう」でも紹介した「地質の旅―池上断層エデュケーショナルパーク」は、その中の1本です。他の動画も見てみましょう。
さらに知識を深めたい人には、川端訓代等「台湾縦谷の玉里断層クリープ運動—玉里大橋の変形」(『地質学雑誌』、117 巻 1 号、2011年)、「台湾における活断層研究の現状と問題点」(『地質ニュース』第564号、2001年)が、台湾の活断層の全体の理解に役立ちます。