灣寶沐香農場
湾宝沐香農場
開発から守られたスイカの名産地
湾宝沐香農場は苗栗県後龍鎮にあります。この農場は、「後龍ハイテクパーク」(科技園区)建設に対する反対運動において重要な役割を果たした張木村と洪箱夫妻が所有する土地で、それぞれの下の名前から一文字ずつとり、語呂合わせで「沐香」となりました。有機農法で、スイカ、ダイコン、サツマイモを栽培し、台湾主婦聯盟生活消費合作社(台湾版生活クラブ)などに出荷しています。農作業体験をしながら、台湾の農業が抱えている問題を知り、日本の状況とも対照し、更に地球温暖化や過剰な開発で世界がボロボロになってきた時代に合う農業と生活のあるべき姿について考えるヒントがもらえます。
学びのポイント
なぜハイテクパークの予定地になった?
立地がよかったからです。2000年代初期、後龍鎮に台湾本島を南北に縦断する第二高速道路のインターチェンジが設置され、さらにその後、台湾高速鉄道の苗栗駅もここに造られました。交通の便がよくなったことで、企業誘致が有利になるとよく言われます。
なぜ住民が反対?
最大の原因は、候補地として挙げられたことについて、住民らが事前に何も知らされなかったことにあります。また、住民らが農業で十分に生活できることもポイントです。後龍鎮産のスイカは日本統治時代から有名で、天皇に献上したほど品質がよいものだそうです。もともと稲作に不向きな土壌でしたが一部自費で農地を改良しました。農地であるため土地収用の価額が低く、住民たちにそれまでの苦労を無駄にするような開発計画に応じる意志はありませんでした。さらに、現実に県に集まった企業にはハイテク産業がきわめてすくなく、県の目的は、工業団地造成にともなう地目変更がもたらす利益にあると指摘されました。
住む権利と「公共性」?
同時期に湾宝と同じように、一方的に土地収用に翻弄される人々が少なくありませんでした。さまざまな事例がありますが、要するに農地や住む権利が守られていないというのです。そこに問われるべきものは、推進側がいう「公共性」や「全体に利益をもたらすためには一部の犠牲が必須だ」という言説です。ハイテク産業の発展のために、農民が農地を放棄することは唯一の選択ではないはずです。
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】【事後学習】日本の有機農業について、調べてみましょう。
- 【事前学習】【事後学習】日本の土地収用制度について、調べてみましょう。なぜ成田空港建設に反対していた農民がいるのかを調べてみましょう。
- 【現地体験学習】農事を手伝いながら、洪箱氏の話を聞いてみましょう。 す
参考資料
土地収用に反対する農民について、日本の事例を描いた漫画ですが、尾瀬あきら『ぼくの村の話』(講談社、1991年)があります。書籍の場合、宇沢弘文『「成田」とは何か——戦後日本の悲劇』(岩波新書、1992年)もおすすめです。
- 所在地
- 苗栗県後龍鎮湾宝里7鄰120号