渡邉義孝撮影

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台中市政府(原台中州廳)

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台中市政府(旧台中州庁)

西洋風日式建築の傑作、白亜の宮殿は内部も見事

台湾中部最大の都市、台中は日本統治時代に都市計画が進められたまち。中心部の整然とした街路のコーナーに、1914年の1期工事完成から1934年まで増築を重ねて建てられたのがこの旧台中州庁です。L型の中心を交差点に向けていて、その姿は羽を広げた白鳥のよう。連続するアーチの上に、すらりとした円柱で支えられたバルコニー空間があります。これはロッジアと呼ばれ、陰影をつけるとともに格式を高める働きをしています。以前は市定古蹟だった旧台中州庁は台中市政府庁舎として使われてきましたが、その価値が再評価され、2019年に国定古蹟に格上げされました。向かいに建っている真っ白い旧台中市役所とともに美術館の園区として整備される計画もあるようで、今後さらに人気のスポットになりそうです。

学びのポイント

ギリシアからきたデザインも?

正面のロッジアに並ぶ計6本の柱に注目。てっぺんに巻き貝のような彫刻があるイオニア式列柱です。これは、古代ギリシアから続く西洋建築の王道というべきスタイルです。ほかに、中央から突き出した「車寄せ」には、三角形のブロークンペディメントが帽子のように載り、歯形のようなデンティルが水平に並んでいます。そんな装飾一つ一つが、この建物を比類のない壮麗な姿に見せているのです。

渡邉義孝画

いちばんの見どころは階段?

洋館の内部の見どころは、なんといっても階段。上下の空間をつなぐ劇的な装置であるとともに、窓から導いた光によって、天に昇るような上昇性を人に与えます。この建物でも、柱や階段の板(段板)、やわらかくカーブする手すりと、それを支える美術品のような丸い子柱などは必見です。来た人は、ここでワクワクしてほしい! そう願って建築家は階段をデザインするのです。台中州庁のメイン階段は、玄関を入ってすぐ目の前。小さい声で「わっ」と驚いてほしいところです。

裏側は別の顔?

中庭に進んで、振り返ってみましょう。ぜんぜん違う「顔」が見えます。裏側は赤煉瓦のボディと白いライン、そして半円アーチが整然と並んでいます。正面とはうって変わって、「おとなしい」姿なのです。異なる様式を大胆に組み合わせる、これは設計者の森山松之助が得意とした手法のひとつでした。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】森山松之助が台湾で設計した建築は、ここのほかにどんなものがあるか調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】台中は空き家問題が深刻で、空き家再生活動も盛んです。どんな動きがあるか調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】この建物の対面にある白い洋館について、それがかつて何の建物だったか調べてみましょう。
参考資料
旧台中州庁は、「文化あふれる台湾」のスポットの一つとして、文化部のウェブサイト(日本語)で紹介されています。また、2019年に市定古跡から国定古跡に昇格したことについては、「日本統治時代の官公庁舎『旧台中州庁』、国の古跡に格上げ」(『フォーカス台湾』、2019年4月27日)を参照してください。また、「修復中の旧台中州庁から日本時代の金庫 製造元や専門家に解錠依頼へ」(『フォーカス台湾』、2020年4月6日)という記事には、森山松之助が建物の屋根裏に施したある建築上の工夫に触れています。あわせて読んでみましょう。

(渡邉義孝)

ウェブサイト
台中市政府観光旅遊局 https://travel.taichung.gov.tw/ja-jp/Attractions/Intro/1288/
所在地
台中市西区民権路99号