渡邉義孝撮影

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宮原眼科

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宮原眼科 菓子店

スポットのキャッチコピー: 古くて新しい! 空間まで味わえるスイーツの殿堂

台湾のお土産と言えばパイナップルケーキ。その老舗である「日出」がオープンさせたショップがここです。でも「眼科」って、ヘンですよね?実はここ、1927年に宮原武熊という日本人眼科医が建てた2階建ての医院だったのです。戦後は市立衛生院として使われていたものの、1999年の大地震や台風などで建物も傷み、やがて空き家となりました。それを日出グループが大胆に再生。大人気のアイスクリーム売場やカフェ(1階)、サロン(2階)や展示室(3階)が生まれました。2012年のことです。上にかぶさっているガラスのかたまりは、リノベーション(改修)で増築した部分。「文化財を保存」するだけでなく、「現代的なセンスによる大胆な増築」にチャレンジした前衛的な建築作品になりました。レトロな家具や豪華なシャンデリアが内部空間を飾り、まるで美術館のような美しい内装が楽しめます。

学びのポイント

外観の特徴は?

まず目を引くのは赤煉瓦と白い柱。コーナーにある玄関を額縁のように飾ります。白い柱のてっぺんには、花びらと葉からなる彫刻が見えます。これは柱頭とか、キャピタルとか呼ばれ、紀元前のギリシア時代から続く、もっとも古い建築装飾のデザインです。建物の格式と威厳を示すために、日本でも銀行の建物などによく使われています。 赤煉瓦の壁が道路に沿って続き、アーチ(半円形の橋のような構造)を描いて連続しています。その下は歩くのにもってこいですね。このようなアーケード部分は騎楼の亭仔脚(ていしきゃく)と呼ばれ、強い日差しや急な雨を気にせずに散策やショッピングができるのです。台湾のまちあるきの強い味方です。

古いものが「おしゃれ」なの?

台湾では、宮原眼科だけでなく、歴史的建造物をリニューアルして再生する動きが盛んです。歴史的建造物には清の時代の城塞や民家もありますが、多くは、日本統治時代に建てられた官庁、商店、工場、住宅などです。これらを「日式建築」と呼びます。それらがいま、続々と文化財に指定されているほか、おしゃれなカフェやホテル、アート空間、ショップなどに姿を変え、若い人に人気のスポットになっています。煉瓦や木材が永い時間を刻み、しっとりと落ち着いた質感を見せ、本物の素材に触れられる古い建物は、新しいビルよりも上質な空間であるという認識が広まってきたといえるでしょう。その背景には、台湾の民主化を経て、人びとが自分の土地の歴史を再評価するようになったという時代背景があります。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】宮原眼科菓子店の定番はパイナップルケーキですが、台湾の農産物の中でパイナップルはどのくらいの比率を占めているでしょうか。台湾におけるパイナップルの名産地も調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】 台中駅は、2016年に現代的な新駅舎が建てられたました。これにともない1917年建設の古い駅舎がどうなったか。調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】衰退した駅前旧市街地の活性化が、宮原眼科リニューアルの時のもうひとつの課題でした。いま、周辺の人の流れがどうなっているか観察してみましょう。
参考資料
台湾の飲食文化については、赤松美和子・若松大祐『台湾を知るための60章』(2016年、明石書店)の第44章「飲食文化」をご参照ください。横山透『台湾百年ストーリー―20の物語に出会う旅』(2019年、辰巳出版)は、宮原眼科をストーリーの一つとして取り上げています。

(渡邉義孝)

ウェブサイト
公式 https://www.dawncake.com.tw/
所在地
台中市中区中山路20号