鹿港 龍山寺 鹿港 龍山寺

泉州系漢人移民の信仰を表す代表的な建築

蔡蕙頻撮影

鹿港龍山寺は1786年に建造されました。清朝統治時代からすでに建てられていたこのお寺は、台湾に5箇所ある「龍山寺」の中で最も良好な保存状態を誇るものだといわれています。いまは国定一級古跡に指定されています。鹿港の住民は主に泉州系の漢人移民であり、台湾に移住してきたとき、故郷の神様もつれてきて祀りました。鹿港龍山寺に祀られているのは、全国の他の龍山寺と同じく「観世音菩薩」という女性の神様です。鹿港龍山寺の壁は書道家や絵師の作品で飾られています。特色ある建築としてだけでなく、数多い芸術品を有することでも、見どころに満ちています。

学びのポイント

泉州系とは?

清朝期、台湾のエスニックグループは「先住民族」と「漢人」とに大別できます。「漢人」とは主に清朝統治時代に中国大陸から移ってきた人々を指し、さらに「ホーロー人」(「福佬」「河洛」と書く。閩南系台湾人)と「客家人」と分けられます。また、「ホーロー人」は出身地によって「泉州系」と「漳州系」とに分けることができます。同じ「ホーロー人」とはいえ、「泉州系」と「漳州系」は言葉のアクセントがところどころ違います。台湾に渡ってきてからも、分かれて暮らしていました。昔は、「泉州系」と「漳州系」の人々は利害関係などからよく争いとなり、「漳泉械鬥(民族間の武力衝突の意味)」と呼ばれました。現在では、このような対立はなくなっています。

台湾で「龍山寺」と呼ばれるお寺は一つではない?

台湾に「龍山寺」と呼ばれるお寺は5箇所あります。北から順に、淡水龍山寺、萬華(艋舺)龍山寺、鹿港龍山寺、台南龍山寺、そして鳳山(高雄にある)龍山寺です。いずれも泉州系の移民によって建てられたもので、観世音菩薩を祀っています。

壁にある書道や碑はどのように理解すればいい?

鹿港龍山寺の壁にある作品の芸術的価値は高いのですが、それだけではありません。お寺を改修する際、寄付した人の名前や改修に関する記録を碑に刻んでいます。そのため、碑は単なる石ではなく、極めて重要な歴史資料だといえます。

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】台湾の宗教建築は「寺」や「廟」とそれぞれ名付けられます。それはどのように違うか調べてみましょう。
  2. 【現地体験学習】山門の一対の龍柱には、吉祥を表す鳥が五羽刻まれています。どんな鳥かを探してみましょう。
  3. 【現地体験学習】神に感謝する芝居を演じるための舞台も設けられています。ここで声を発すると、マイクがなくても共鳴効果があり、響きのある音が出ます。舞台の構造に着目して、その秘密を探ってみましょう。

参考資料

2013年、台湾の内政部によって台湾宗教にかかわる建築の100か所が、「台湾宗教百景」に指定されました。鹿港龍山寺もそのひとつです。台湾で最も完全な状態で保存されている清朝建築である点が評価されました。ウェブサイトには「景観の価値」、「歴史と沿革」、「特色あるナビゲーション」などが掲載されています。日本語のサイトはこちらです。専門的ではありますが、鹿港については、黄世輝の博士論文『台湾における地域文化の再生・創新としての「社区総体営造」に関する研究 : その展開過程と課題』の第3章「歴史と共存する鹿港の生活文化村づくり」に詳しく紹介されています。鹿港の雰囲気を知るには、李昂著、藤井省三訳『夫殺し』(JICC出版局、1993年)がおすすめです。そのおどろおどろしさに恐れおののくことでしょう。

(蔡蕙頻)