ランドマークの「大学池」(曹崇銘提供)

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溪頭自然教育園區

渓頭自然教育パーク

森林に包まれて体を癒し、渓頭の生物多様性を体験

「渓頭自然教育パーク」(略称:渓頭)は、南投県鹿谷郷の鳳凰山麓、標高1150mの高地に位置し、面積は2500haあります。日本統治時代は東京帝国大学(現在の東京大学)農学部付属の演習林(1902年設置)でしたが、1950年から国立台湾大学管理下の実験林場となりました。東京帝大演習林時代の使命を引き継ぎながら、時代の変化に合わせて、現在は林産、林学、森林環境、生物資源の保護、森林療法などに関する大学の基礎研究や学生の実習などに供することを目的とした研究施設となっています。
1970年代に政府から「森林遊楽区」の指定を受けた渓頭は、長年人気の観光スポットです。1990年代以降、自然志向の高まりに加え、交通網や観光施設の充実、訪台外国人の増加、中高生の卒業旅行先としての人気の高まりなどに伴って入場者が増え、現在では年間200万人を超える入場者を記録しています。

学びのポイント

植栽後100年の人工林

渓頭には手つかずの美しい自然が残っています。パーク内の林のほとんどは、日本統治時代に造られた人工林(日本スギと台湾スギの2種類)です。スギのほか、イチョウ、ベニヒノキ、孟宗竹などもさかんに成長しています。 人工林とはいえ、植栽後100年以上も過ぎた今では、自然林のように変わり、多くの種類の動物たちが暮らしています。それは環境保護のために森林伐採が厳しく制限され、森を大切にする環境教育が国民に深く根付いたことの結果かもしれません。 園内の散策歩道を巡ると、環境教育を進めた努力と成果を実感できます。

(曹崇銘提供)

自然生態学キャンプの拠点

パーク内の見どころといえば、樹齢3000年に近い神木が挙げられます。ただし、この神木は空洞の腐敗が進み、連日の雨のために2016年9月11日に倒れてしまいました。倒木は現地に保存され、現在その周りに第二世代の苗木を育てています。そのほか、もと貯木場が変わった、エメラルド色の水面が美しい大学池、池に架かる竹製のアーチ橋、バードウオッチングができる散歩道、台湾では珍しいイチョウ並木、台湾固有の竹類と世界の珍しい竹類46種を収集している貴重な竹類標本園など、見どころが豊富です。生物多様性の条件がそろっている渓頭には、大学生や高校生を対象とした生物多様性コースがあります。重要な野外実習地や研究拠点、また自然生態学キャンプの拠点でもあるのです。
神木に通じる林道の横には、林冠がたいへんよく保護されているスギの森があります。その林冠を観察するため、全長220m、高さ22.6m(7階建ての建物に相当)の空中回廊がつくられています。これは森林をタイワンリスの食害から守る目的もあります。空中回廊を散歩しながら鳥の目線で樹冠を観察してみましょう。樹冠が薄茶色に変色しているのはタイワンリスの被害によるものです。
このようにパーク内では、森林の生態はもとより、植物、鳥類、昆虫などの基礎を学ぶことができます。

東京帝国大学附属演習林時代の名残も

ここは日本統治期には東京帝国大学付属演習林だったため、何人もの日本人研究者が精力的に調査研究をしていました。台湾の植物分類に重要な貢献をした早田文蔵、金平亮三などの学者もこの地で研究していました。金平亮三は研究成果を『台湾樹木誌』という本にまとめました。彼らの業績は今も評価されています。管理オフィスの前には、金平亮三と早田文蔵が植えた記念樹が今も残されています。

銀杏林(曹崇銘提供)

さらに学びを深めよう
  • 【現地体験学習】【事後学習】渓頭のほとんどを覆う日本スギの人工林の多くは、日本統治時代に植栽されたものです。100年前に台湾の溪頭で植林された日本スギの成長を日本のスギの成長と比較してみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】渓頭自然教育パークはかつて東京帝国大学の演習林でした。HP「東京大学演習林とは」を見て、東京大学の演習林の戦前からの歴史と特徴を調べてみましょう。
参考資料
国立台湾大学実験林の日本語版紹介動画を見てみましょう。渓頭にあるテーマパーク型宿泊施設「妖怪村主題飯店-渓頭明山森林会館」を事例とするポピュラー文化を活用した観光資源創造の可能性については、山中千恵、伊藤遊、百瀬英樹「ポピュラー文化の観光資源化と『伝統の創造』 ─台湾南投県渓頭妖怪村を事例として─」(仁愛大学研究紀要. 人間学部篇』第14号、2015年)を読んでみましょう。
金平亮三『台湾樹木誌』(台湾総督府殖産局、1917年)を国会図書館のデジタルアーカイブで読むことができます(https://dl.ndl.go.jp/pid/956866/1/4)。

(曹崇銘)

ウェブサイト
国立台湾大学実験林ウェブサイト https://www.exfo.ntu.edu.tw/jp.php?id=2

(英語、日本語、中国語)

所在地
台湾南投県鹿谷郷内湖村森林巷9号
特記事項
体験コースと宿泊は要予約、人数制限なし、事前相談が必要です。
連絡先:国立台湾大学実験林管理事務所:台湾南投県竹内鎮前山路1段12號
TEL:+886-49-2642181 ext112 FAX: +886-49-2659967