鈴木洋平氏提供
大甲鎮瀾宮
大甲鎮瀾宮
台湾最大規模の「進香」行事が行われる古廟
大甲鎮瀾宮は媽祖を主神として祀る廟で、雨乞いに応えてくれる「雨水媽」とも呼ばれています。林對丹らの寄進によって1770年に建立され、地域の人々をまとめる中心地となってきました。鎮瀾宮で特に知られているのが、「進香」と呼ばれる行事です。現在は新港奉天宮を目的地として、鎮瀾宮の媽祖像を中心に、付き従う人々が9日間にわたって行列をつくって進みます。地域の人々のみならず、台湾全土からその霊験を慕って訪れた人々とともに媽祖の行列が進む様子は、毎年の風物詩として「三月瘋媽祖」という言葉をもって各種メディアに紹介されています。2011年には国家重要民俗活動に指定されました。台湾の民間信仰が、現代の人々に与え続けている熱気を感じることができるでしょう。
学びのポイント
「進香」とはどんな活動でしょうか?
台湾の廟では、霊験あらたかとされる各地の廟からその力を分けてもらい、神像を設けることが多く見られます(分霊)。「進香」には、日本のお伊勢参りのように遠方の有名な廟への集団参詣や、分霊先から分霊元へ巡行する神様に巡礼する集団参詣などの意味があります。後者は、分霊元や近隣の同じ神様を祀る廟などに対して、神像が訪問していく行事です。人間の活動との対比で「神の里帰り」などとたとえられることもあります。「進香」では神像が廟を出て人々の間を練り歩きます。神様の移動に協力するため、普段からの加護に感謝するため、神様の近くに行けることで霊験を願うためなど、様々な理由から、移動していく神像に人々が付き従います。個人で参加する場合もあれば、「進香団」などと呼ばれる集団で参加する場合もあります。
「三月瘋媽祖」とはどういう意味ですか?
「三月瘋媽祖」とは、旧暦3月の間、媽祖への活動で夢中になる人々の様子を表した言葉です。媽祖は旧暦3月23日の生まれとされているため、旧暦3月の間、台湾各地の媽祖廟で関連行事が行われます。大甲鎮瀾宮媽祖遶境進香を行う日程は、毎年の元宵節(旧暦1月15日)に行われる、媽祖の意志を聞く行事で決定されます。目的地は新港奉天宮で、9日間にわたって輿に乗った媽祖を中心に往路・復路を歩き続けます。媽祖の乗った輿から御利益を受けようとする人々のほか、周辺の大小の廟からも多くの人々が行列に付き従って大集団となります。純粋な宗教的行事としてだけでなく、観光イベントとして行列を見物したり、行列に参加したりする人たちも多く見られます。
さらに学びを深めよう
参考資料
志賀市子「台湾における Q 版神仙ブームとその背景 ――信仰文化の商品化と消費をめぐる一考察―」(『国際常民文化研究叢書 3』、2013)の5節には、鎮瀾宮と進香の変遷について詳しく解説しています。台湾宗教の全体像の中で媽祖のことを知りたい場合は、若林正丈編『もっと知りたい台湾 第2版』(弘文堂、1998年)などから読んでみることをおすすめします。四方田犬彦『台湾の歓び』(岩波書店、2015年)では、筆者が大甲鎮瀾宮の進香に参加した体験記が記されています。台湾での動きも含めた、現代の巡礼行為と観光の関わりについて考える際は、活動については、星野英紀・山中弘・岡本亮輔編『聖地巡礼ツーリズム』(弘文堂、2012)第4章「台湾の媽祖進香」などを読んでいくと良いでしょう。
- ウェブサイト
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公式http://www.dajiamazu.org.tw/
(中国語)
台湾観光局公式https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003112&id=R18
台中市政府観光局https://travel.taichung.gov.tw/ja-jp/Attractions/Intro/872/
- 所在地
- 台中市大甲区順天路158号
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