魏思維氏提供

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中科智慧機器人自造基地

中部サイエンスパークAI(人工知能)ロボティクス・ハブ

台湾中部のサイエンスパークで人工知能が果たす役割を学ぶ

中部科学園区(サイエンスパーク)は、工作機械や自転車の製造拠点として有名な台湾中部に、2003年に国家プロジェクトして設立されました。現在は新竹サイエンスパーク、南部サイエンスパークに次ぐ台湾の科学技術産業の発展を支える工業団地となっています。総面積は約1,485ヘクタールと台湾のサイエンスパークの中で最大規模を誇り、オプトエレクトロニクス、半導体、精密機械などの国内外の企業が入居し、研究施設や工場を稼働させています。中部サイエンスパークAIロボティクス・ハブは、人工知能の専門家を育てるために設立されました。施設内にはロボットアーム、3Dプリンター、工作機械やその他の製造工程で使われるAIロボットが展示されています。

学びのポイント

台湾中部が国内の科学技術の発展に果たす役割は?

新竹サイエンスパークは半導体関連製品の開発や製造、南部サイエンスパークは液晶パネル製品の開発や製造が中心です。一方、台湾中部は、工作機械や自転車産業の集積地として歴史があり、こうした背景から中部サイエンスパークは、精密機械産業の発展に力を入れています。さらに国内のオプトエレクトロニクスや半導体関連企業を誘致し、新竹サイエンスパークや台南サイエンスパークを補完する形で、台湾の科学技術の発展を担っています。

科学技術の発展と環境保護への配慮

科学技術産業は経済発展を促しますが、その一方で産業廃棄物や排水、排気などの汚染物質を排出します。中部サイエンスパークの建設時にも多くの周辺住民が反対しました。そして、環境運動団体や周辺住民が政府に働きかけ、サイエンスパークの建設計画に参加して政策を動かす権利を勝ち取ったのです。工場建設が環境にどのような影響を与えるかを調査する環境アセスメントに周辺住民が参加し、活発に意見を述べ、政府を動かして環境に配慮した工業団地の建設を実現させました。

AIロボット技術が産業の発展に与える影響

AIロボット技術は生産活動の効率化、コスト削減などに貢献します。また、新型コロナウイルスの世界的な流行で人同士の接触を回避しなければならないなかで、AIロボット技術による工場の自動化、無人化が進められています。2018年に設立された中部サイエンスパークAIロボティクス・ハブでは、サイエンスパーク内に入居している企業と協力し、AIロボットを活用した技術革新を共同で実施する場を提供しています。国際的なロボットコンテストの開催、世界最先端のAIロボット技術の導入など、グローバルな人材の育成、技術交流を行っています。

魏思維氏提供

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】中部科学園区の果たす役割とAIロボット技術の将来性についてまとめましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】国連が打ち出したSDGs(持続可能な開発目標)では、環境の持続可能性確保が提唱されています。中部科学園区を例に、環境保護に配慮しながら科学技術を発展させるための方法について考え、議論してみましょう。
  • 【現地体験学習】AIロボティクス・ハブの見学に加えて、付近に立地する中部科学工業園区管理局や台湾を代表する半導体製造大手、TSMC(台湾積体電路製造)の工場周辺を散策し、科学技術の研究機関や企業が隣接する効果について考えてみましょう。
参考資料
中部科学園区やAIロボティクス・ハブの概要については、中部サイエンスパークの日本語版ウェブサイトが参考になります。また、さらに専門的知識を深めたい方は、台湾のAIなどのイノベーション政策について、岸本千佳司「台湾のスタートアップ支援政策―シリコンバレーとの連携強化,アクセラレータ基地(TTA,TST)建設―」(『東アジアへの視点』30巻2号、2019年)で詳しく学べます。このほか、中部科学園区の環境アセスメントと市民運動については、沼崎一郎、佐藤幸人編『交錯する台湾社会』(アジア経済研究所、2012年)の第8章、寺尾忠能「『開発と環境』をめぐる台湾社会の変動と市民社会―公害・環境紛争と環境影響評価制度を中心に―」が参考になります。

(田畠真弓)

ウェブサイト
公式https://ctsphub.org.tw/

(中国語)

所在地
台中市大雅区科雅路6号

特記事項
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