タピオカミルクティー
ミルクティーにタピオカパールを入れた飲み物。台湾が発祥。東日本大震災後の台湾旅行ブームや、2017年の「インスタ映え」ブームなどを背景に、「映えフード」として人気が爆発した。その後、ブームは落ち着いたものの、台湾の国民的飲み物であり、日本でも「お茶の新しい飲み方」として定着している。
伝統的な台湾茶の飲用スタイルは、小さな急須で丁寧に淹れ、ゆっくり味わうことに重きを置くものであり、悠然とした時間と茶の香味を楽しむ文化を象徴している。しかし、淹れるのに手間と時間を要することから、若年層の間ではあまり親しまれなかった。
1980年代以降、台湾では冷たい飲み物を中心とした「泡沫紅茶店(バブルティーショップ)」が登場する。煮出した紅茶に氷と果糖を加え、シェイカーで振ることで、細かな泡が立ち、爽やかな口当たりと視覚的な楽しさを兼ね備えた新しいスタイルのお茶が提供されるようになった。この革新的なスタイルは、従来の温かい茶文化の枠を超え、若者たちに大きな支持を得た。なかでも「小歇(シャオシエ)」のような店舗は、若者の社交と交流の場として人気を集めた。
1990年代後半になると、手づくりの茶飲料は「テイクアウトカップ型」へと進化し、多様な新感覚ドリンクが次々に誕生した。その代表格が「タピオカミルクティー」である。台湾で「粉圓」と呼ばれるタピオカは、キャッサバ粉またはサツマイモ粉からつくられ、茹でることで独特のもちもちとした食感が生まれる。本来は豆花やかき氷など、伝統的な甘味に用いられてきた食材である。タピオカミルクティーの発祥については、台中の「春水堂」説と、台南の「翰林茶館」説の二説が広く知られている。
2000年代に入ると、台湾各地で個性豊かな茶飲ブランドが次々と誕生し、台南の「清心福全」「茶の魔手」「50嵐」「迷客夏」、高雄の「貢茶」、台中の「可不可熟成紅茶」、新竹の「日出茶太」、台北の「CoCo都可」などが台頭した。各ブランドは独自の茶葉の香りやレシピを打ち出し、熱心なファン層を獲得している。
今日では、タピオカミルクティーは単なる飲料を超えて、台湾の現代的な食文化を象徴する存在となり、世界中で親しまれる国際的な商品へと発展している。

國立臺北大學海山學研究中心オリジナル「青柑綠奶」(碧螺春ミルクティー)(林佩欣氏提供)
もっと知りたい方のために
・國立臺北大學海山學研究中心編『三峽茶鄉觀光護照2.0』新北:國立臺北大學海山學研究中心、2024年
・五十嵐隆幸「飲料天国・台湾―タピオカブームで終わりじゃない」SNET台湾編『臺灣書旅――台湾の食文化を知るためのブックガイド』SNET台湾、2024年、pp.24-25
