モシナ(魔神仔)

藤野陽平

台湾の妖怪の一つ。漢字では「魔神の仔」と書くので恐ろしい印象を受けるかもしれないが、これは台湾語のモシナの当て字とみなした方がよく、ちょっとしたイタズラをする程度の、比較的身近な妖怪である。日本で河童や唐傘お化けが、イタズラはするけれども、どことなく気になり、友達になってみたいと思わせなくもない存在であるのと近い。モシナは背が低い子供のような姿をした妖怪で、赤や青、緑と言われたり、小猿や目の大きいカエルのようだとも言われたりする。山でモシナにイタズラをされると迷子になってしまい、モシナが差し出す食べ物を食べると、幻覚を見させられているだけで、気がつくとそれは虫や牛の糞などだったりするという。そのため神隠し事件が起きると、モシナのせいとされることがある。神隠しなので、郊外や山などに現れる。また、イタズラで迷子にさせるが、助けてくれることもあり、迷っても数日後に発見されるとされる。

 意外かもしれないが、これまで台湾には妖怪という概念がなかった。もちろんモシナのようなものは昔からいたのだが、「妖怪」という単語で言い表されるのは日本の妖怪のことで、台湾のモシナのようなものを指す言葉ではなかった。ところが、近年は台湾で妖怪ブームが起こっている。これは台湾人が近年自分たち台湾について考えるようになってきたことが背景にあり、そのきっかけの一つに、ひまわり学生運動があるという。そうした台湾妖怪の代表格であるモシナは、映画「紅い服の少女」や小説「ブラックノイズ 荒聞」といった、日本語語版もあるホラー作品の題材にされることもある。

もっと知りたい方のために

・『怪と幽』(特集 妖怪天国 台湾)vol.003、2019年
・何敬堯・魚儂、出雲阿里訳『台湾の妖怪図鑑』原書房、2024年
・何敬堯、甄易言訳『[図説]台湾の妖怪伝説』原書房、2022年
・張渝歌、倉本知明訳『ブラックノイズ 荒聞』文藝春秋、2021年