黒羽夏彦撮影

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台南孔廟

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台南 孔子廟

儒学の創始者孔子を祀った廟で、清代台湾の最高学府

孔子廟(孔廟、文廟、聖廟)は儒学の創始者である孔子を祀る施設です。台南孔子廟は台湾で最も古く、鄭氏政権の時代に創建されました。日本統治時代になると周辺に多くの行政機関が建てられました。現在、それらの建物はリノベーション(再生利用)されて観光スポットになっており、この一帯は「孔廟文化園区」といわれます。孔子廟の東側に泮宮石坊という牌楼(門)があり、その先は「孔廟商圏」という商店街です。本来、泮宮石坊が孔子廟の入口なのですが、日本統治時代に道路がつくられ、分断してしまいました。西側にはかつて台南神社が隣接していましたが、現在は小学校となっています。

学びのポイント

孔子廟とは何ですか?

孔子廟は孔子を祀ると同時に、儒学を広めるための学問所でもありました。古来、中国ばかりでなく、日本、朝鮮半島、東南アジアなど儒学を受容した地域に孔子廟があります。台南には鄭氏政権時代の1665年、鄭成功やその後継者・鄭経の参謀であった陳永華の提唱により建てられました(孔子廟のすぐ近くには陳永華が建てた永華宮という廟もあります)。孔子廟は清朝にも重視され、歴代皇帝から匾額が贈られました。入口にある「下馬碑」は孔子廟に敬意を表して下馬するよう命じる碑文です。この「下馬碑」をよく見てください。漢文と満洲語で書かれています。両方とも清朝の公用語でした。

建築にはどのような特色がありますか?

台南孔子廟は伝統的な閩南(福建省)建築様式で建てられ、南へ向かって右側に廟(孔子を祀る所)、左側に学問所を設置するという構造になっています(「左学右廟」)。「右廟」の中心をなすのは大成殿です。孔子はここに祀られています。天井を見上げると、清の歴代皇帝や戦後の台湾総統から贈られたたくさんの匾額が掛けられています。大成殿は「コ」の字形の建物で囲まれています(「三合院」)。ここには礼楽用の伝統的な楽器や祭儀道具が収納されているほか、有名な儒学者たちの位牌も並べられています。

なぜ学問所があるのですか?

孔子廟には儒教を広めるための学校という役割があり、清代に台湾の中心であった台南の孔子廟はとりわけ重視されていました。入口の門に掲げられた「全台首学」とは、台湾の最高学府という意味です。台南孔子廟は「左学右廟」の構造をとっており、「左学」には明倫堂、文昌閣という二つの建物があります。明倫堂はむかしの教室でした。文昌閣には文昌帝君や魁星爺という学問の神様が祀られています。文昌閣には科挙(むかしの中国で官僚になるための資格試験)の受験を目指す学生たちがお参りに来ました。

台南市政府観光旅遊網図庫系統 林晧睆、楊蟬鴻撮影

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】儒学とは何か、調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】日本にも孔子廟があります。どこにあるのか調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】どんな匾額や石碑があるのか、現地で実際に見てみましょう。
参考資料
孔子と儒学についてはおびただしい関連書籍が出版されています。台南孔子廟については「台湾宗教文化地図」(中華民国内政部、日本語あり)というサイトの「台南孔子廟」で詳しく説明されているので参照してください。大洞敦史『台湾環島──南風のスケッチ』(書肆侃侃房、2014年)の台南市の項では現在の様子が描かれ、大東和重『台湾の歴史と文化』(中公新書、2020年)の「第4章 古都台南に残る伝統と信仰──清朝文化の堆積」でも孔子廟に触れられています。「台南を見ると台湾がわかる」のはなぜか?SNET台湾のYouTube番組「台湾修学旅行アカデミー 第7回 台湾Area Studies~台南篇~」(講師:大東和重)も合わせてご視聴ください。

(黒羽夏彦)

ウェブサイト
交通部観光局https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003119&id=78 台湾旅遊網(台南市政府観光旅遊局)https://www.twtainan.net/ja/attractions/detail/4800
所在地
台南市中西区南門路2号