家永真幸撮影

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臺北市立動物園

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台北市立動物園

パンダもいるぞ!台湾で出会う台湾の動物、世界の動物

台北市南東部の木柵という地区に位置する動物園です。日本統治時代の1914年に円山という地区で開園し、現在の場所には1986年に移転してきました。園内は「台湾動物エリア」「熱帯雨林エリア」「アフリカ動物エリア」「鳥園」「温帯動物エリア」等に大きく分かれており、約350種、2500匹の動物たちが飼育されています。2011年に日本から貸与されたタンチョウや、2008年に中国から贈られてきたジャイアントパンダ(2013年、2020年には子どもも誕生)を見ることもできます。園内はとても広いので、訪問の際は暑さ対策を忘れないでください。

学びのポイント

動物園は動物を見るためだけの場所か?

大きな動物や珍しい動物を見て面白いと思うのは、今も昔も人類共通の娯楽と言えます。しかし、様々な種類の動物を一カ所に集めて飼育、展示するのは並大抵のことではありません。そのため、動物園という施設は、動物の生態に関する知識や高い環境管理技術、豊富な飼育経験といった「科学力」を象徴する場所と言えます。また、珍しい動物をたくさん展示するためには、自分たちの近くには生息していない動物も遠方から連れてこなくてはなりません。そのため、動物園の展示には、その園と外国との関係も反映されています。

臺北市政府觀光傳播局提供

台湾の生態系にはどのような特徴があるのか?

園に入ると、すぐ右手に「台湾動物エリア」があります。台湾の地理や気候の特徴は、修学旅行中にも車窓からの景色やあなたの肌で直接知ることができそうですが、生態系の特徴を体感する機会はそれほど多くないかもしれません。動物園の教育的な展示を通じて学習するのが良いでしょう。その上で、広い園内の他のエリアでは、どういった国々から来たどのような動物たちが、どのような設備のなかで飼育され、展示にはどのような工夫がなされているのかをじっくり味わってください。

台湾人はパンダが好きか?

園内には中国から贈られたジャイアントパンダも飼育されています。実はこのパンダの受け入れをめぐって、かつて台湾社会には強い拒絶反応もありました。中国政府は台湾を将来的に中国の一部として統合しなければならないと考えており、パンダ贈呈にはその日に向けた友好の演出という意味が込められていました。しかし、台湾社会では「台湾は台湾であり、中国の一部ではない」という考えが強まっていたことから、パンダ受け入れへの反対論も噴出したのです。しかし、このあたりは台湾社会の非常に柔軟かつ複雑なところなのですが、いざ受け入れられてみると、パンダは台北市立動物園の人気者となっています。ただ、それは「自分たちの動物」ではなく「外国の動物」としての愛し方のようにも見えます。では、台湾の人たちにとって「自分たちの動物」とは一体何なのでしょうか。園内の展示や来園者の様子を観察していると、そのあたりも見えてくるかもしれません。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】台北市立動物園は日本の動物園とどのようなつながりがあるのか調べてみよう。
  • 【現地体験学習】 台湾ではどんな動物が人気があるのか、実際に園を訪ねて観察してみよう。
  • 【現地体験学習】台湾の人たちは、どのような動物を「台湾のシンボル」だと考えているのか、現 地の人たちに聞いてみよう。
参考資料
台北市立動物園を取り立てて紹介する日本語の本は見当たりませんが、友好園協定を結んでいる 釧路市動物園(北海道)が作成した「台北市立動物園の歴史」という11枚組のPDFファイルのページの下の方に掲載)は、写真満載で分かりやすく参考になります。日本統治時代の台湾における人々の暮らしや娯楽については、若林正丈・家永真幸編『台湾研究入門』(東京大学出版会、2020年)所収の顔杏如「在台日本人」、陳培豊「「平穏」な籠の中で歌う」、陳文松「日常生活史」などが参考になるかと思います(動物園は出てきませんが)。ジャイアントパンダが中国から台湾に贈られる際に発生した政治問題にも興味があれば、家永真幸『国宝の政治史』(東京大学出版会、2017年)や家永真幸『パンダ外交』(メディアファクトリー新書、2011年)もご覧ください。

(家永真幸)

ウェブサイト
公式https://www.zoo.gov.taipei/Default.aspx 交通部観光局 https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003016&id=230 台北旅遊網(台北市政府観光伝播局)https://www.travel.taipei/ja/attraction/details/837
所在地
台北市文山区新光路2段30号