台湾の人々の歴史認識を知る重要な手がかり
新興国の日本が「眠れる獅子」の異名を取る中国(清)を日清戦争で破り、最初の海外植民地として台湾島と澎湖諸島を手にしてから、第二次世界大戦で敗れてそれを手放すまで、約50年におよんだ日本の台湾統治をどう考えるべきか。リノベーションされて台湾各地に今も残る日本統治時代の壮麗な建築物や大規模なインフラ設備は、日本から台湾を訪れる人々の目に、日本が台湾の近代化に力を注いだ動かぬ証拠と映るかもしれない。しかし、これらの建築物やインフラ設備はそもそも何のためにつくられたのか、それは純粋に台湾の人々の生活を豊かにするためのものだったのか。日本の台湾統治は慈善事業などではなく、畢竟植民統治であったという根本に立ち返って考えてみる必要がある。これまでSNET台湾は、『臺灣書旅~台湾を知るためのブックガイド』所収の「日本統治時代をどう考えればいいのか?―『過去』を語る『現在』」(洪郁如)やYouTube『台湾修学旅行アカデミー』の「第12回 台湾と砂糖~甘い砂糖のしょっぱい話~」(清水美里)、「第20回 台湾の歴史のみかた」(胎中千鶴)などのコンテンツを発信して、日本の台湾統治がもたらした「進歩」を過度に強調し、そこに台湾の「親日」の理由を見出す言説に疑問を投げかけてきた。しかし、近代化の事実を基に「日本はよいことも(を)した」と信じる人は今も多い。それでは、台湾の人々は、日本による統治をどのように認識しているのであろうか。それを知る上で有力な手がかりとなるのが台湾の学校で使われている歴史教科書である。三民書局から出版されている普通高校用の歴史教科書を翻訳した本書は、台湾の標準的な歴史認識がどのようなものであるかを我々に教えてくれる一冊だ。教育交流であれ、ビジネスであれ、台湾の人々と深く付き合うには、彼ら彼女らが日本統治時代を含む台湾の歴史について、何を、どのように知っているかを弁えておくことが良好な関係を築く基礎となるだろう。