「きよし本」と歩んできた
手元にはけっこうな数の台湾関連書籍があるが、正直なところ通読していないものも多いし、目次だけ「読んだ」本もある。そんななかで、ヘナヘナになるほどページをめくり、最後は本体がぶっこわれるまで持ち歩いた推し本が、伊藤潔『台湾』だ。私は本書を「きよし本」と呼んでいる。
きよし本とのつきあいは長い。1993年刊行と言えば、ちょうど社会人の私が台湾史を一から学ぼうと大学に入り直したころ。手に入れやすい新書で、簡明かつ丁寧に書かれているきよし本は、たちまち大切な教科書となった。
その後大学教員として台湾史を教える立場になると、今度は授業準備に欠かせない相棒として大活躍。人名や事件など基本事項を度忘れしても(もともと知らなくても)大丈夫。本書をめくれば必ず答えが見つかる。親切で優しいきよし本。
ある日、いつものように教室に持参しようとしたら、唐突に崩壊した。ページがバラバラとほどけて、研究室の床に散ってしまったのである。ああ、お疲れきよし…。あらためて共に歩んだ長く尊い日々を思い出し、涙する私であった。