ハイレベルな入門書
本書は2001年出版のちくま新書『台湾――変容し躊躇するアイデンティティ』を増補、改題し、2023年に講談社学術文庫として出版したものである。
評者が初めて原著を手に取ったのは大学院修士課程に進学した2004年頃だった。学部生時代にちゃんと読んでいない時点で評者の意識の低さはお察しいただきたいが、大学院生にもなってようやく読了した評者は、あろうことか本書の奥付に「難しい」「分かりにくい」といった趣旨のメモを鉛筆書きで残した。メモを残したと言いながら文言を正確に引用できないのは、実は、後に当該コメントを消しゴムできれいに消したため、跡形もなくなっているからである。
個人的な思い出話をわざわざ持ち出したのは、本書をこれから読む若い人たちに、次のことをお伝えしたかったからである。第一に、本書は原著が新書という一般向け媒体であるものの、初読者にとって決してスッと頭に入るタイプの本ではない。しかし第二に、ある程度の前提知識を得てから読むと、本書は実に密度が高く、かつ非常に行き届いた内容であることに気づかされる。