協会の正面玄関(李佩儒撮影)

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新龍社區發展協會

新龍社区発展協会

美味しく、楽しく、ゆったりとした漁村の暮らしから台湾の魚食文化を知る

台湾最南端の屏東県は、温暖な気候に恵まれています。黒潮の影響により海洋資源が極めて豊富であり、台湾の養殖漁業の重要な拠点となっています。屏東県ではさまざまな魚が養殖されていますが、重点は経済的価値が高い魚種にあり、午仔魚(ミナミコノシロ)、龍膽石斑(タマカイ)、龍虎石斑(龍虎ハタ)が最もよく知られています。新龍社区は屏東県枋寮にある小さな漁村で、世界で初めて龍膽石斑の稚魚を育成したことから「龍膽石斑の故郷」と呼ばれています。新龍社区の養殖漁業用地は224ヘクタールを超え、その7割以上が養魚池として利用されています。 新龍社区発展協会は、地域の自然生態、歴史、文化および養殖漁業を基に、それらを食育と結び付けることで多様な体験型活動を展開しています。1尾の魚が養魚池から食卓に上るまでの過程を知ることで、台湾の養殖漁業と食魚文化に対する理解を深めることができます。

学びのポイント

台湾における養殖漁業の歴史と発展

四方を海に囲まれた台湾では、貝塚の出土品からもわかるように、先史時代から漁業が行われていました。オランダ統治時代から清朝統治時代にかけては、海禁政策や漁業への重税、海賊や戦争といった要因により、漁業は目立った発展を遂げることはありませんでした。 日本統治時代になると、宗主国である日本への供給を目的として、漁業の制度化が進みます。動力船への補助、漁具や漁法の改良、養殖漁業の発展、漁港の建設、さらには漁業移民の奨励といった諸政策によって漁業の産業的価値を高め、台湾漁業は動力化・近代化の時代に移行しました。 初期の養殖漁業は、自然環境を活用する粗放的な方法をとっていましたが、1963年に草魚や鰱魚の人工繁殖に成功し、稚魚を大量に生産できるようになったことで、台湾養殖漁業の発展の基礎が築かれました。 しかし、養殖漁業の繁栄の裏には深刻な環境問題があり、環境にやさしく、持続可能な発展を実現することが今日の台湾の養殖漁業の重要課題となっています。さらに、近年は、政府による農村・漁村再生プロジェクトの推進やレジャー漁業の盛り上がりもあり、台湾の養殖漁業は一つの転換期を迎えています。

漁村の再生と持続可能な漁業

「龍膽石斑の故郷」と呼ばれる新龍社区では、土地の8割が養魚池として利用されています。養殖漁業の転換政策に対応するため、新龍社区発展協会は2015年から農村再生プロジェクトの研修を受け、補助金申請に着手しています。これにより、地域づくりの基盤が築かれ、全国ゴールドメダル農村コンテスト優秀賞を受賞しました。さらに2020年には、住民の寄付で古民家を購入し、これを地域活動センターに改修しました。この施設は事務所や販売所として利用されるほか、地域の高齢者のケアを担う介護の拠点にもなっています。 環境にやさしい持続可能な漁業にも取り組んでいます。新龍社区では2016年から産学連携とブランディングによって、養殖漁業で生じる廃棄魚鱗を加工・精製してコラーゲンを抽出し、食品や美容ケア用品の製造に活用しています。これにより漁業による廃棄物を減らし、付加価値の高い商品を生み出しています。また、漁村ガイドの食育活動を通じて、低炭素な地元産の魚を食べることで食物の輸送距離(フードマイレージ)を減らすことになるという理念を広めています。

養魚池(李佩儒撮影)


養魚池から食卓へ:魚食教育

新龍社区発展協会が設計した魚食教育プログラムでは、養魚池での餌やり、漁村ガイドツアーへの参加、午仔魚の一夜干しづくりといった活動や、龍膽石斑のスープかけご飯など地元産魚介類を使った食事の体験を通じて、訪れた人が養魚池から食卓までの過程を知り、「養殖の魚は品質が劣る」というよくある思い込みを払拭しようとしています。協会は台湾の有名菓子メーカー「乖乖」と協力して龍膽石斑の醬油味スナック菓子を開発し、龍膽石斑の美味しさをより手軽に味わうことができるように工夫しています。また、地域の漁村風景やマングローブ生態系を活かすだけでなく、地元の観光業者と周辺の観光資源(観光列車「藍皮解憂(Breezy Blue)号」やハイキングコース「浸水營古道」など)を結び付けることで、さらに豊かな観光を実現しようとしています。

龍膽石斑の醬油味スナック菓子(李佩儒撮影)


さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】スーパーや魚屋で台湾産の海産物を探してみましょう。
  • 【現地体験学習】台湾の魚料理を食べてみて、日本の魚料理との調理法や味つけの違いについて記録してみましょう。
  • 【事後学習】日本と台湾の養殖漁業の共通点と相違点について調べてみましょう。
参考資料
台湾から日本への台湾龍虎ハタの輸入は8年の交渉を経て2024年に解禁されました。福岡TNCニュースの「台湾の高級魚『龍虎ハタ』福岡で熱視線 冷凍コンテナで西鉄が日本初輸入 淡泊さとうまみの上品な味わい スーパーでも販売」(2025年3月13日)で、日本初上陸の様子がよくわかります。台湾龍虎ハタの輸入開始は大きなニュースとなったため、「台湾龍虎ハタ」で検索すると、関連記事が数多く見られます。農産物・水産物の輸出入をめぐる日本と台湾と中国の関係については、國府俊一郎國府俊一郎「台湾食材(パイナップルなど)と日台中関係」(『臺灣書旅~台湾の食文化を知るためのブックガイド~』SNET台湾、2024年)を読んでみましょう。

(李佩儒)

ウェブサイト
公式FB https://www.facebook.com/xinlongcommunity

(中国語)

所在地
屏東県枋寮郷義民路209-3号

特記事項
漁村ガイドツアーは電話またはLINEで予約が必要です(中国語)。連絡先は協会の公式FBを参照。