パイナップル畑(國府俊一郎撮影)

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鴻旗有機休閒農場

鴻旗有機レジャー農場

鴻旗有機休閒農場—屏東で味わうパイナップルと有機農業の魅力

台湾南部の屏東県にある「鴻旗有機休閒農場」は、金鑽パイナップルをはじめとする有機栽培の果物で知られる農園です。台湾では2007年以降、有機農業を支援する法律が整備され、今では農地の約3%が有機農業に転換されています。有機農業は化学肥料や農薬を使わず、生態系の循環を大切にする栽培方法で、健康や環境にやさしいだけでなく、農村の発展にもつながります。鴻旗有機休閒農場では、手作業で雑草を取り除くなど手間を惜しまない栽培を続け、自然な甘みと香りが引き立つパイナップルを育てています。さらに、品種を組み合わせて一年中出荷できる仕組みを工夫しています。観光客はパッションフルーツなどの収穫体験もでき、台湾の有機農業の魅力を五感で味わえるスポットです。

学びのポイント

台湾の有機農業の歴史と特色

有機農業の歴史は意外に古く、日本では1970年代からその考えが取り入れられ始め、台湾にも徐々に広まっていきました。2007年には台湾政府の農業部が「農產品生產及驗證管理法」を制定し、有機農産品に対する政府認証制度が始まりましたが、その時点ですでに2013ヘクタールの有機農地があったといいます。その後、2019年の「有機農業促進法」の施行により、有機農業はさらに拡大し、農地面積は2万4000ヘクタール、全体の3.06%に達しています。  「有機農業促進法」では、有機農業とは、生態系の循環とバランスを重視し、化学肥料や農薬、遺伝子組換え生物およびその産物を使用せずに、農作物、林産物、水産物、畜産物を生産する農業と規定されています。驚くべきことには、農産品の生産だけでなく、加工・包装・流通といった全工程で「有機」であることが求められています。  そのほか、台湾の有機農業には、食品の安全や健康の増進、環境保護だけでなく、農村の発展や農家の収入向上といった経済的効果が期待されている点も特徴的です。

台湾のパイナップルと有機農業

楠(クスノキ)の一種で、台湾原産の「牛樟(ぎゅうしょう)」という樹木があります。高級家具や木彫り工芸品などに重宝されるほか、樟脳の原料としても知られ、牛樟から抽出される精油は虫除けや防臭剤、医薬品などに用いられています。かつては台湾の海抜200〜2000メートルの広葉樹林に広く分布していましたが、乱伐により減少し、現在は農林法による貴重樹木の一つに指定されています。 牛樟の枯木や切り株には、牛樟芝(ベニクスノキタケ)というキノコが寄生・生育します。中国医学では、牛樟芝には肝機能の保護や解毒、抗癌作用があると言われています。喬本生医股份有限公司は、この牛樟芝の栽培を手がけ、森林と同様の温度や湿度を維持する専用施設を整備しています。 牛樟は数が減少し、伐採が禁止されているため、栽培用の原木の確保が困難です。そこで喬本生医では、牛樟の木とその生育環境である森林の再生をめざして、循環型農法の確立を模索しています。

パイナップル(國府俊一郎撮影)


鴻旗有機休閒農場—有機農業で育てられた台湾の果物を知る

鴻旗有機休閒農場では、「金鑽パイナップル」をはじめとした有機栽培の果物を生産しています。経営者の許哲榮氏は、一般の農家が使う化学肥料を使わず、自然の力を活かして品質を最優先として栽培しています。生育には時間がかかりますが、自然な甘みと風味が際立つパイナップルを育てることができるといいます。 許哲榮氏の父の許天來氏は、台湾がWTOに加盟した時期に、台湾農業の競争力強化のために有機農業に取り組みました。精緻農業(ハイエンド農業)の必要性を感じ、有機栽培を導入したのです。現在でも、農場では手作業で雑草を取り除くなど、時間と手間を惜しまない作業を続けています。農園の経営効率も工夫し、パイナップルの品種をいくつか組み合わせて栽培することで、年間を通じて安定した出荷ができるようにしています。また、観光農園として、一年を通じて、季節ごとにパッションフルーツなどの収穫体験ができるように工夫されています。

パッションフルーツの収穫体験(國府俊一郎撮影)

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】台湾の有機農業でのパイナップルの栽培方法と、日本のパイナップル(または他の果物)の栽培方法を比較してみましょう。
  • 【現地体験学習】農場で見た台湾の植物や果樹を五感で観察し、その印象を自分の言葉でまとめてみましょう。
  • 【事後学習】日本での「食」や「自然環境との共生」に関する事例(地元の有機農業や地産地消の取り組みなど)を一つ調べ、それを台湾での農業体験(例:鴻旗有機休閒農場での有機農業見学や収穫体験)と比較してみましょう。
参考資料
台湾のパイナップルの育て方は、台湾農業部「食農教育」のパイナップルの栽培方法ページを調べてみましょう。中国語なので、翻訳ツールを使うといいかもしれません。 少し難しいかもしれませんが、日本語で台湾の有機農業について紹介している記事もあります。蔦谷栄一「台湾における有機農業、減農薬・減化学肥料栽培の取組実態--環境負荷軽減を基本とした地道な展開」『農林金融』53巻11号は、以下のサイトで読めます。

(國府俊一郎)

ウェブサイト
公式FB https://www.facebook.com/HomChiOrganic.TW/

(中国語)

所在地
屏東縣高樹鄉泰山村產業路330号

特記事項
農場体験は要予約(電話:+886 8 796 7301)。