福隆海水浴場
福隆海水浴場
第四原発がはっきり見える黄金の砂浜
福隆海水浴場は、新北市の端に位置しながら、全国的な知名度を誇る海岸です。海岸線道路(2号線)から徒歩で海の方向に進み、彩虹橋と呼ばれるアーチ橋を渡ると、青い海に黄金色の砂浜が広がり、眺めているだけで癒されます。砂浜の南側は双渓河の河口に面しており、河幅が広く、水の流れも穏やかなため、カヤック、水泳、ウィンドサーフィンなどをするのに最適な場所とされます。毎年の定番となっている砂の彫刻のイベント(福隆沙彫芸術季)と貢寮国際海洋音楽祭のために訪れる人も大勢います。海水浴場の東側に、東興宮という廟があり、そこから砂浜を見ると、その背後に山が連なる景色が広がっています。海水浴場の北西方向にある塩寮海浜公園は、19世紀に北白川宮能久親王が上陸した地です。以前は上陸記念碑がありましたが、戦後「抗日記念碑」と改められました。ここからもう少し北に行くと、貢寮区のもう一つ有名な廟、媽祖を祀る仁和宮があり、その周辺に海鮮料理を楽しめる店がいくつもあります。
学びのポイント
なぜここで国際音楽祭が?
蘇貞昌氏が新北市の前身である台北県の県長だった頃(1997-2004年)に、地域活性化対策として「一郷鎮一特色」(郷鎮は市町村に相当)プロジェクトを推進しました。その一環で貢寮国際海洋音楽祭が考案され、現在よく知られている平溪放天燈(スカイランタンフェス)も、そのプロジェクトの成果です。「一郷鎮一特色」は、日本の大分県の一村一品運動に触発されたものです。こうしたイベントの開催によって、地域の知名度が上がり、多くの観光客が訪れるようになりましたが、過疎化に歯止めをかけたかどうかについては、今なお議論が分かれています。なお、当時、音楽祭の盛り上がりの陰で、原発建設反対運動が目立たなくなり、「不可視化」が進むのではないかという声がありました。
なぜここで砂像の展示イベントが?
塩寮から福隆まで3キロも続く黄金海岸といわれる砂浜の砂は、きめが細かく、粘度が高い上、水との相性がよく、砂像を造るのに適しています。しかし、以前(2002-07年頃)は、すぐ近くで行われた第四原発の建設で砂が減少し、砂浜の後退が周辺住民により問題とされました。建設以前の写真と建設後の写真を比較すると、その違いは一目瞭然です。環境団体の緑色公民行動連盟は住民と協力し、前述の国際音楽祭の開催期間中に、「音楽を愛するなら、砂浜を守ろう」と名づけたアクションを起こし、第四原発不要論を提起しました。この行動は、第四原発建設の中止に直結したわけではありませんが、問題の「可視化」に寄与しました。砂の減少問題はこれ以降特に悪化はしていないものの、音楽祭など大型イベントを開催する際には、別の場所から砂を運び、補充しています。
第四原発が運用しないことを予測した「媽祖廟」?
1980年、貢寮区塩寮地区を予定地とした、第四原発建設計画が浮上しました。それに対して、貢寮区の住民は、1988年に地元反対組織「塩寮反核自救会」を結成し、いろいろな取り組みをして運動を継続してきました。住民の多くが漁師であるため、漁業・航海の守護神である媽祖を祀る仁和宮は、信仰を集めます。当初、住民はポエ占いで、「第四原発は本当に建つか」と、媽祖にききました。「建つ」という結果を受けて落胆した住民らは諦めず、「ならば稼働するか」と再び質問したところ、「稼働せず」という答えが返ってきました。こうして、人びとの命と生業を守る媽祖様は、運動の支えにもなったわけです。
帝国がやってきた
貢寮区は日本統治の原点であるだけではなく、大航海時代の台湾とヨーロッパとの接触もここから始まりました。1626年、後に台湾北部で16年間の植民地統治を展開することになるスペインは、現貢寮区の三貂角から上陸しました。
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】【事後学習】第四原発建設の経緯と住民による反対運動について調べてみましょう。
- 【事前学習】【事後学習】福隆海水浴場、塩寮抗日紀念碑、第四原子力発電所、東興宮、仁和宮等の位置関係を地図で確認してみましょう。
- 【現地体験学習】「塩寮反核自救会」のメンバーと、地域活性化について話しましょう。
参考資料
反原発運動の経緯については、陳威志「第28章 社会運動と政治の駆け引き―第四原発反対運動とヒマワリ学生運動」赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための60章』(明石書店、2016年)に詳しい紹介があります。福島原発事故以降の展開については、陳威志「台湾からみた福島第一原発事故」町村敬志・佐藤圭一編『脱原発をめざす市民活動』(新曜社、2016年)もおすすめです。
- ウェブサイト
- 交通部観光局https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003091&id=759 新北市観光旅遊網(新北市政府観光旅遊局)https://tour.ntpc.gov.tw/ja-jp/Attraction/Detail?wnd_id=115&id=111744
- 所在地
- 新北市貢寮区福隆里福隆街40号