すぐに思い浮かぶのが果物のレンブ(蓮霧)やハタ(石斑魚)でしょう。特に、皮が赤く、真珠のような光沢がある「黒珍珠」という種類のレンブは、ぜひ食べてみてください。しかし、地元住民がレンブの栽培とハタの養殖のために地下水を過剰に汲み上げたために、深刻な地盤沈下と塩害問題が発生しました。40年間で3.5メールも地盤が沈下し、まち全体の三分の一が海水面より低くなってしまったそうです。地盤沈下は、良くも悪くもレンブ とともに、林辺郷の代名詞となってしまったのです。
光采濕地農圃提供
2009年に、台風の影響により林辺郷は一ヶ月にもわたって冠水被害に見舞われました。農業や漁業に壊滅的被害が生じるという危機と、地盤沈下問題を緩和するために、県は、使えなくなった土地に太陽光パネルを設置するプロジェクト、名づけて「養水種電」を導入しました。県が農業・養殖漁業従事者と太陽光発電業者の仲介をし、一方は太陽光パネルを設置して電力を生産し、もう一方は土地を貸し出して収入を得るとともに、土地の生産力を回復させるのです。ただそれだと、パネル下の空間が無駄になるので、市民団体などが活用方法を考え、野菜などの栽培をするようになりました。これは、逆転の発想でした。「農園にパネルを」ではなく、「パネルに農園を」となったのです。
光采濕地農圃提供
林仔辺自然文史保育協會は、光采農園を運営する前に、「光采湿地再生可能エネルギーパーク」(略称、光采湿地)を運営していました。そこは、農園よりはるかに広くて、太陽光パネルだけではなく、小規模の風力発電設備とマイクログリッドも導入されました。また、治水機能をもつ遊水池もあったので、県の「養水種電」の成功例として非常に注目を集めていました。しかし、借地契約期間が満了すると、地主は契約更新せず、より高い金額を出す 太陽光発電業者に貸すことにしました。その結果、光采湿地の面積が10ヘクタールから2.5ヘクタールに縮小しました。協会も運営から撤退し、現在の農園を造り、引き続き環境教育に従事しています。光采湿地の運営は県に変わりましたが、ノウハウがなく苦戦しているようです。環境にやさしいはずの太陽光発電は、結局市場原理がはたらいたことで、環境保全事業と離れた結末を迎えてしまいました。