桃園忠烈祠暨神社文化園區 桃園忠烈祠と神社文化園区

台湾島で唯一ほぼ完全な形で残された日本統治時代の神社建築

桃園市政府提供

第二次世界大戦後の台湾では、中華民国政府によって国家に殉じた人々を祀る忠烈祠という施設が各地に設置されました。1946年、桃園市の虎頭山麓に新竹県忠烈祠(当時この地は新竹県の一部でした)として設置された今日の桃園忠烈祠は、各地の忠烈祠と同じように、日本統治時代に建設された神社の跡地にあります。他の忠烈祠と異なるのは、日本式の神社建築がほぼ完全に残されていることで、1930年代の雰囲気を今日に伝える場所として、市民に人気のSNS撮影スポットとなり、映画のロケにも使用されています。1994年に国家三級古跡に指定された施設の周辺は、豊かな緑に覆われ、松の古木や春の桜、秋の紅葉が訪れる人々の目を楽しませています。

学びのポイント

神社建築の特徴は?

桃園忠烈祠の前身は、日本統治時代の1938年に創建された桃園神社です。当時春日山と呼ばれた虎頭山の中腹を切り開き、選び抜かれたヒノキ材で造営されました。桃園神社からは南西方向の市街地を一望でき、開漳聖王廟(桃園景福宮)が見渡せたといいます。建築には流造(ながれづくり)という様式が採用されました。日本では、京都の下鴨神社、上賀茂神社を代表として広く全国に見られる様式で、本殿正面の屋根の前垂れが長く延びているのが特徴です。全島に200以上建てられた台湾の神社にも、この様式が多く用いられました。本殿、拝殿、社務所、手水舍、鳥居、石灯籠、狛犬、神馬像、参道等が良好な状態で残され、独特の雰囲気を醸し出しています。

長く延びた本殿の前垂れは流造の特徴(桃園市政府提供)

日本式神社はなぜ残った?

戦後、中華民国政府は、日本統治の精神的支柱であった神社の跡地に、抗日戦争の戦死者をはじめ国家に殉じた人々を祀る忠烈祠を設置しました。1972年に日本が台湾の中華民国と断交すると、台湾の政府は、日本の植民地統治を象徴する神社遺跡を徹底的に取り壊すことを指示します。これにより、台湾全島で神社建築が次々と姿を消していきましたが、桃園神社の遺構は、全島でほぼ唯一破壊を免れました。1980年代半ばには、老朽化した建物の修復に際して、神社建築を維持することの是非が議論されましたが、「日本の神社建築は唐の建築の流れをくむ」という建築家の意見が通り、神社建築のまま修復が行われました。つまり、桃園神社の建築はこの時、「中国らしさ」によってその命脈を保ったわけです。

忠烈祠に祀られているのは?

1946年に新竹県忠烈祠として発足した当初、忠烈祠には、台湾島からオランダ勢力を駆逐し、清朝と戦った鄭成功に始まり、劉永福、丘逢甲といった台湾民主国(下関条約後、日本の台湾領有に抵抗して蜂起した現地勢力)に関わる人々、日本統治時代の武装抗日運動の犠牲者と、様々な人が祀られていました。抗日の英雄として祀られた人々の中には、社会主義に傾倒していた人もいて、「反共」を掲げる中華民国政府によって後に除かれた人もいます。

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】桃園忠烈祠の前身である桃園神社は1938年に創建されましたが、その背景には、当時台湾を統治していた日本が推し進める「一街庄一社」の運動がありました。日本統治時代末期に展開した「一街庄一社」運動、およびそれと密接にかかわる皇民化政策について調べてみましょう。
  2. 【事前学習】【事後学習】近代日本の植民地、「勢力圏」に建てられた、いわゆる「海外神社」について、その分布と現状について調べてみましょう。
  3. 【現地体験学習】現在忠烈祠にはどのような人々が祀られているか調べてみましょう。

参考資料

台湾をはじめ、近代日本がその「勢力圏」に建てた海外神社の歴史と現在を総括的にわかりやすく扱ったものとして、中島三千男『海外神社跡地の景観変容』(御茶の水書房、2013年)があり、台湾にとどまらず、広く問題をとらえる助けとなります。台湾に建てられた神社について特に論じたものとしては、金子展也『台湾旧神社故地への旅案内』(神社新報社、2015年)、金子展也『台湾に渡った日本の神々』(潮書房光人新社、2018年)があります。桃園市政府孔廟忠烈祠聯合管理所のYouTubeチャンネルには、「桃園忠烈祠及び神社文化エリア―『初めての忠烈祠、最後の神社』」と題する日本語字幕つきの動画が掲載されています。また、神奈川大学非文字資料研究センターが運営するウェブサイト『海外神社(跡地)に関するデータベース』も参考になります。桃園市の教育旅行向けガイドブック『桃園散策』にも詳しい情報が掲載されています。

(山﨑直也)

ウェブサイト
公式https://confucius.tycg.gov.tw/ 交通部観光局https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003107&id=9307 桃園観光導覧網(桃園市政府観光旅遊局)https://travel.tycg.gov.tw/ja/travel/attraction/1057
所在地
桃園市桃園区桃園市桃園区成功路三段200号